視線の先 3

 

 

 

 

「コンラート」

 

後ろから低い声が届いた。

それは陛下………ユーリの後を追い、執務室から出ようとしたときだった。
振り返ると、ちょうどあけた窓から入った風が、名を呼んだ相手の髪を嬲っていた。
黒に近い灰色の髪を持つ……………父違いの義兄、グウェンダルだ。

凄みのある無表情。
見た相手が思わず謝りたくなる程の壮絶な皺。
きりりと結ばれた口元には威厳だけを兼ね備えて。

-------------------------------前国王である母親の側で、その長子として、何を聞き、何を見て、何を感じたのか。
彼の国を想う心は強い

ただ、国を良くするとだけを使命としているから、無愛想な義兄であるのだが。

 

「どうしたんです?」
「ヴォルフと先に行っとくなー」
「えぇ。ヴォルフ、よろしく頼む」
「言われなくとも!」

先に扉の外に出たユーリ達を見送り、俺は体ごとグウェンダルに向きなおした。
彼も持っていたペンをペン立てに直し、腕を組んでいる。

「………私に何か言いたいことがあるのか?」
「………………え?」

問い返して、気づいた。
当然といえば当然か。グウェン程の者が俺の視線に気づかないわけないだろう。
一応、隠していたのだが。

グウェンは変わらず、俺を見つめている。

まいったな、と微笑を深くしてみる。
出来れば、、、、、言いたくないのだが。

「コンラート」

先程と同じ抑揚で名を呼ばれる。
だけど、誤魔化しは効かない、といわんばかりの雰囲気で、眉間の皺が先程より三ミリは深くなっている。

こうなってしまえば、言った方がいいのかも知れない。
気付いていたのなら、俺がどれぐらい見ていたのか、どのぐらい前から見ていたのか知っていて、
確かに気にはなるだろうから。

俺は一つ息を吐いて、微かに首を傾げて笑った。
そうして、ゆったりとした歩調で、グウェンダルの座る執務机に近づいていく。

見上げてくるグウェンダルに、困ったように微笑んで、
躊躇しながら、口を開いた。

 

「………………皺が……………」
「…………何?」

 

「眉間の皺を、、、、、、、、、、、、触って見たくて」
「-------------------------------------は?」

「…………すいません」

ぽかん、と見開いた瞳が、真実、予想外の言葉だったのだろう。
ユーリに聞いた、『鳩が豆鉄砲を食らった顔』とはこんな顔の事を言うのだろうとぼんやり思った。

最初は好奇心で何気なく、どんな感触なのだろう、と思っただけだったが………
それから、眉間の皺を触りたくて触りたくて仕方なくなってしまって、
つい無意識で見つめてしまっていたのだ。

さすがのグヴェンもまだぽかんとしている。
俺もどうしていいかわからず、困った笑みを貼り付けたままでいたが……………

 

不意にグウェンダルが立ち上がった。
さすがに怒ったかな、ともう一度、謝罪の言葉を口に乗せようとした瞬間-----------------

 

グウェンダルは、ふ、と笑った。
眉間の皺が消えるぐらい柔らかな笑みを。
そうして、くしゃくしゃに髪が撫でられる。

「---------------グウェ………」
「そうだな……………お前になら、いいかもな」
「え…………?」
「さて、私も食事に向かうことにしよう」

撫でられた指先が離れていく。
瞳は、うっすらと細められて、柔らかい光を宿している。
そうして、風を纏わせた長い髪をなびかせ、静かに部屋から立ち去った。

 

 

驚いて立ちすくむ、俺を残して。

 


だって、ほら、コンラートってそんな感じしません?(ぁ
ちなみにあずまも触ってみたい、、、眉間の皺!!
ぷにぷにしそうでv(ぇぇ

次で終わりますv(多分

お気に召されたら、どうぞよろしくお願いしますv → web拍手を送る

070110 あずま

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