闇夜に浮かぶのは、静かに地を照らす月。
それは自ら光を発するのではなく、太陽の光を受けて、地を照らすのだという。
太陽がいないと月は輝くことはできない。
だけど。
月がないと、夜を照らすものは幾光年離れた星の輝きのみ。
月の灯りを失うと、夜はどれだけ闇に支配されるのだろう-----------------------。
音のない森 2
簡単に荷物を纏めると、支払う金を置いて宿を出た。
季節は冬の始まり。
冷たい風が肌を刺し、オレンジの髪を嬲って通り過ぎる。
町は閑散としていた。
当然だろう。幾らここが花街だとはいえ、すでに深夜を過ぎ、、、後数刻で夜明けとなる時刻だ。
一時の快楽を得、眠りについている時間。
眠りについた町の細い道を抜け、大通りへと移動していく。あの高貴な色を宿す二人は、今、この国に戻ってきていることを聞いているが、
今の時間なら、偶然でも会う事はないだろう。
城に準備された自室に戻り、酒をあおって眠ればいい。
あぁ、上司に渡す書類を渡すためには早く起きなければ。空を見上げる。
そこにはどこも欠ける事ない月が浮かんでいる。
それだけで、身が疼くのだが。
日が昇ってしまえば、この感情も落ち着くだろう。『月となりますよう』
そう願いをかけられた人は、あまりにも月に似ているから。
その月が隠れてしまえば、もう、大丈夫だから。
交代で詰めていた兵に通してもらうと、早足で兵舎に急いだ。
視線は城に向けずに。
見てしまえば、溢れ出てしまいそうだから。早く。
早く、早く、早く、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。
「ヨザック?」
早く歩いていたせいか、その他の理由か。
荒い息だけを聞いていた耳に、聞き覚えのある声が響いた。
それは聞きたいと、思っていた………それと同じぐらい聞きたくなかった声。
幻聴かと思った。
だが、右手から今まで気づかなかった気配を感じる。
振り返りたくない、と思った。
それなのに、体は素直に踵を返していて。「………猊下?」
「やっぱり、ヨザックだ」兵舎まで、ほんの数十メートル。
それより近い馬小屋から、黒い髪と瞳を持つ少年がひょっこり顔を覗きだしていた。
嗚呼、どうせなら、もう一人の双黒であってくれればよかったのに。
「こんな時間に戻ってきたのかい? ご苦労様だったね」
硝子の向こうにある澄み切った黒い瞳が微かに細められる。
おどけた表情とは違う顔に鼓動が一つはねる。月夜とはいえ、どうしてそんな細かい所まで見えるのだろうか?
…………あぁ、彼は『月』だから、か………「………猊下こそ。こんな時間にこんな所で何をしているんです? 護衛は?」
声が喉にひっかかった。声がいつもより低く響いてしまった。
相手が訝しげに表情を変えたのがわかった。
闇の気配が動く。「ちょっと眠れなくてね。四千年前の知識を使って抜け出してきた」
さく、さく、と足音が近づいてくる。
静かな声が近づいてくる。
動かない、、、否、動けない俺に少しづつ。
早くもなく、遅くもなく。いつもの抑揚で。「ここは城内とは言え、城門に近すぎます。早く自室にお戻りください。危険です」
聡い彼のことだ。
俺の変化に気づかないはずがない。
それなのに、一歩一歩俺に近づいてくる。風が彼の匂いを運んでくる。
微かな柑橘の匂い。この国で使われている品格高い染髪料だ。
それは俺の鼓動を早める要素まで持っていた。これ以上、近づかれたら、危険だ、と思うのに。
「君が僕を守ってくれるだろう?」
側に近づいた貴方。
ふわり、と笑った微笑みは、いつもと同じ微笑であったけど。それは俺の中の何かを壊すには最大の威力を持っていて。
ぐっと拳を握り締めた。
閉じ込めた想いがあふれ出す--------------。
色々といっぱいいっぱいです。主にあずまが(ぁ
守りたい気持ちと、反して、無理矢理自分のものにしてしまいたい気持ち。
そんなオトコに気付かないのか無自覚に笑う少年。次は、、、、頑張ります(ぐぐ(何
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070607 あずま
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