怪我をした----------------のが、ヨザックにばれた。

 

とはいえ、怪我をしたのは地球での話。
一気に寒波が到来して、寒さに肩をすくめて歩いていたら、階段が見えなくて。
あれっと思った時にはまっさかさまに落ちてディザイア(ふるい?
ついでに木片が足に引っかかり、ズボンをざっくり切り裂いて、いたーーいと歯をかみ締めたところで、
我らが魔王陛下が下にいて。頭から落ちたのを支えてもらったのはいいけど、
当然、同い年の僕を完全に受け止めることが出来ず----、
そこに、いっそ、ありがたいと感じる水溜りがあって、ありえない深さと感じる流れに、あら、と一言。
いや、水の中で言えないけど。
そうして見えるのは、見慣れた景色。懐かしき眞魔国。
まあ、頭を打たなかったのはラッキーと思って、水から頭を上げると、名付け親(魔王陛下のネ)とプーとお庭番が待っていて。
懐かしさに、やあ、と声をかけようとしたら、三人の顔が凍りついた。
渋谷と二人、顔をあわせてどうしたのか問おうとして---------真っ赤に染まっている池の水に気づき、

---------左足に激痛が走った。

 

 

傍にいて。

 

 

「はい、げいか、ああぁ〜んv」
「うわぁ、色っぽい声だね。食欲ナクスヨ、グリエチャン」
「うふ、猊下ったらv グリエのいい声を聞けるのは猊下だけよんvvv」
「ハハハハハ。それは拷問だね。オスの黄色い声なんてキキタクナイ------」
「まぁ、猊下ったら、恥ずかしがり屋さんっvvv」

愛らしく両サイドで結んだ髪がカールして、頭を動かすたびに、ふわふわと動く。
椀のものを一筋すくい、全開の笑顔は可愛いといえば可愛いかも知れないが、
自分よりがたいがでかいのでひいてしまう。そして、ちゃんとナース服。当たり前にミニスカ。
かいがいしく世話をしてくれるのは嬉しいけど、あの場にいた渋谷がさっさと怪我を治してくれているので、
何故、こんな事になっているのかワカラナイ。
いや、ヨザックがナース服を着たいだけかもしれない。ありえるところが微妙だ。

「まぁ、イメクラもいいけどね? だけど、お粥をここまでドロドロにしなくてもいいんじゃない?」
「あん、だって、グリエ、驚いちゃったんだもーん」
「ん?」
「血がね--、ぼわっと出て、池が真っ赤に染まって、真っ青になる猊下〜〜〜〜」
「でも、すぐに渋谷が治してくれたし、いいタイミングでこっちに呼んでもらえてラッキーだったよ。
日頃のおこないかなーv」
「日頃の行いがよかったら、こんな怪我しないわよーん」
「そこはほら、運動能力がないからー」
「うふふ、ここなら、グリエが受け止めてあげれるわんv」
「その胸筋で? 硬そうだなー」
「優しく受け止めますわん。優しく、怪我なんて-----------しないように」

「………」
「だから、ずっと、-------ずっと、ココにいればいいんです。そうすれば、あんな怪我することなんてないし、
怪我なんてさせない」
「そして、君が変わりに怪我をするのをみていなくちゃいけないのかい?」
「………………」
「君が嫌なように----------僕も嫌だよ」
「………………」
「………………」
「………………」

「………ヨザック」
「………………」

「ごめんね…………」

俯いていたヨザックが、僕の膝に頭を乗せる。それをそっと撫でた。
地毛だろう、オレンジの髪を指に絡め、出来るだけ優しく。

どちらも君の本音だとわかっている。
そして、君も僕が地球に戻らないといけないことを分かっているだろう。
ただ、理解出来ても、納得できないだけで。
わかっていても---------願わずには、言わずにはおれない言葉を。

傍にいて。
傍にいて。
貴方を独占したい。
そして、貴方を守りたい。
怪我なんてして欲しくない。

「……とんだ、遠距離レンアイだもんね、僕たち」

自分で言って、そのあまやかな言葉に笑みがこぼれる。
ヨザックは動かず、僕の手のひらを享受して、何も言わない。
その無言が、ヨザックの苦しみとか、不安だとか、僕の想像できないような想いが詰まっていて、
だけど、その沈黙が気持ちよくて、心地よくて。

僕も、確かに心配した。
僕の傷を見て---------全ての動きを止めて、蒼白になる君を。

「心配かけて、---------ごめんね」
「………」

囁くように呟くと、もぞもぞとヨザックが顔を上げた。
読み取れない、複雑な表情をしているヨザックは、僕の顔を見て、苦い笑いを漏らした。

「猊下」
「何?」
「心配した分、甘えていいですか?」
「うん、いいよ」

即答すると、そういうと思っていなかったのか、きょとんとして顔を見せた。
それがおかしくて、噴出すと、ヨザックはぷく、と頬をふくらませて見せた。

「もうっ、いっぱいいっぱい甘えて、今日は猊下を独り占めしちゃうんだからっ!」
「はいはい、今日はなあすごっこで遊ぶんだねー」
「違う違う違う違う違う。どうせなら、お医者さんごっこでいいですよ」
「何、素でいってるのさ」

そして、何、するりするりと服を脱がしているんだろう、この筋肉オカマ。
だけど、まぁ、僕もそんな気分だし。

 

顎を持ち上げるのに合わせて、目を閉じる。
両腕も伸ばして、肩の後ろに回した。

僕も同じ気持ちなんだよ、と伝えるために--------------。

 

 

 

 

 

「で、今日は本当に病人なんですね」
「君の無駄な爽やか笑顔はいらないから、早く書類置いてさっさと渋谷のところにもどるがいいよ」
「喉がかれてますねー。のど飴も用意するようにグリエに言っておきますね」
「…………」

 

FIN

 

 

桜さまからのリクで『ヨザケンの村田が怪我をするシリアス話』
五割ギャグで四割シリアス、残りえろっぽく仕上げてみました
ああああああ、楽しんでもらえてなかったらどうじようっ。
でも、楽しく書いてしまいますたv リク、ありがとうですよーーー

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081114 あずま

 

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