それは傷の手当てを受けているときだった。
スヴェレラで受けた傷の大まかな手当てはギゼーラにしてもらったのだが、
小さな擦り傷や切り傷は体全体に残っている。
また、肋骨の骨折に対しては、支えるために包帯を巻いていて、限定して言うと、その巻き替えをしているとき、
室内にノックの音が響いた。「義兄上」
「コンラート。どうかしたか?」
「いえ。機嫌伺に。怪我の状態はどうですか?」いつもの微笑を浮かべ、一つ下の義弟が入ってくる。
市民に人気があるコンラートはもちろん城内のものにも人気がある。
それを証拠に年若いメイド達は、ちらりと見て頬を染めている。そんなメイド達に気づかないのか、包帯を巻きなおしている間、コンラートは邪魔にならないように
室内の隅に移動し、その内、気の利いたメイド頭がソファーに進めている。
だが、コンラートはそれを断り、包帯が巻き終えるのを見ている。グウェンダルはそんなコンラートを不思議に思いながら、処置が終ると、無言で手を上げた。
その意を理解したメイド達は、処置道具を持って、しずしずと退室する。「どうした?」
「そっちに行ってもいい?」
「? ああ、かまわないぞ」そう返事しながらも、そういえば、自分が座っているのは一人がけ用の椅子で、
ソファーのセットに行こうかと思っていると、颯爽と歩いてきたコンラートがすぐ目の前で。
顔を上げると、コンラートは小難しい顔をして、膝の上に上がり、肩に手を置いてくる。「コンラート?」
「……ずいぶんと陛下と仲良くなったんですね」
「あ、ああ。仲良くかどうかはわからないが」
「陛下が貴方の事を色々と知ることが出来たと」
「…………」
「貴方を知っていただいてよかった」
「…………コンラート」
「何?」
「それは私を攻めているのか?」
「…………」問いかけると、コンラートは軽く目を見開いた。
少し顔を引いたので、バランスが崩れないように腰に腕を回す。
そんなグウェンに気づかず、コンラートは驚いた表情のままで、さすがに眉間に皺がよる。「あぁ、そうだったのか」
「……?」長い沈黙の後、コンラートはそう呟いて破顔した。
そのまま、自分の額をグウェンダルの額に押し付け、銀の虹彩を悪戯っぽく輝かす。「俺、嫉妬してたんです、グウェンに」
「………」
「だって、そうでしょ? 俺の知らない所でユーリと仲良くなっているだなんて」
「…………」
「俺の知らない所で距離を近づけて」
「………」
「---------俺しか知らない表情をユーリに見せるなんて」
「……………」コンラートの言葉に一つ一つ眉間の皺を寄せていたグウェンダルだったが、
最後の言葉で、眉間の皺を消した。
今度はグウェンが軽く目を見開いていると、それが更に楽しいと、コンラートがくすくすと笑う。「だから、罰ですよ? これは」
そういって、コンラートはついばむように唇を合わせた。
驚いていたグウェンも目を細めて口の端を上げ、腰を引き寄せる。
そうして、軽く開いた唇に舌を滑り込ませた。くちゅくちゅと合わさる水の音にあわせて、鼻から抜ける色づいた吐息が漏れる。
コンラートは撫でるようにグウェンダルの髪を両手に絡め、ぐちゃぐちゃにかき回す。そうして、思う存分味わって、お互いが唇を離す。
ぷっくり色づいたコンラートの唇が艶かしく、もう一度塞ぎたい衝動に駆られる。「………これが罰なのか?」
それなら、なんて良い罰なのだろうか。
そう続きそうなイントネーションに、コンラートは軽く首をかしげて、「えぇ、そうです。貴方にはキス100回の刑を受けてもらいますよ?」
「望むところだ」くすくす笑う恋人に、グウェンダルは再び、その唇を味わうために顔を引き寄せた。
FIN
甘い、甘いよ、あずまサン。
なんだか、切ないのを書き続けていたので、なんとなく、あまあまをかきたくなってコレ。
今、話を書くためにマ王を読みなおしてて、激しく悶えました
こんな昔からグウェコンダッタンジャン!(ええ
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080710 あずま
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