その日、第二十代七代目魔王に仕える賢者が、言いのたもうた。
「ね、ウェラー卿、しりとりをしない?」
「また、突然の提案ですね」
「いや?」ソファの肘掛に両腕を置いて、そこに顎を乗せ、上目遣いに見つめてくる双黒の少年。
眼鏡の奥の漆黒の瞳は、きらきらと悪戯に輝き、傍らに立つコンラートを見上げている。
一瞬、訪れた沈黙は、コンラートがその意を覗き込もうと、探るように見つめたから。
だが、やはり少年の意を理解する事は出来ず、、、「いえ。猊下の側に入れるなら」
にこっと、眞魔国一のモテ男は、そのまま、手の甲に口付けでもしないばかりに、深くお辞儀して答えた。
しりとり
「じゃぁ、ボクからね〜。……うーんと、そうだなぁ……」
ソファの肘掛から体を起こし、ぱたぱたと足を揺らすさまは、歳より幼く見えて可愛らしい。
元々、顔立ちが可愛らしいのだ。大きな黒い瞳。ふっくらとした頬。ピンク色の唇。
特に、このヒトを可愛らしく見せるのは、こうしておちゃらけている時だとコンラートは思う。
悪戯が成功するかどうか、そのためにわくわくしている表情がいい。ただ、それに騙されると、痛い目に合うのがこのヒトと接するという事で。
「じゃぁ、、、、『ウェラー卿のギャグはサムイ!』 の『い』」
「……………」
「どうしたの、もう、降参?」小首をかしげる様は可愛い。
だけど、へらへらと笑う姿は、ヒトをからかうのが愉しいといわんばかりで。
本当は額に手を当てたかったが、代わりに顎に手をかけて、言葉を考える。
何と言うか、言葉を待っている姿は、こんなにも愛らしいのに。「そうですねぇ……『いい加減なイカ』」
「……………」
「どうしました? 抱腹転倒デスカ?」
「ううん。微妙すぎて思考が停止していた」思考どころか時間も停止していたように見えたが、コンラートは突っ込まなかった。
むしろ、今回もいい出来だなぁ、と自讃していたから。「うーん、、、、『かなり胡散臭い笑顔』」
「『おや、それは誰のことです?』」
「『すぐ目の前のヒト』」
「………」にっこりと満面の笑顔の猊下に、こちらもにっこりと笑ってみせた。
数秒、お互いがにこにこ笑い合うが、多分、ユーリが見たら、全力疾走で逃げ出すに違いない。「『特に猊下の前には誰もいないですけど?』」
間違えではない。コンラートは傍らに……やや斜め横に立っていたから。決して斜め前ではない。
その答えに、ふぅん、と村田は鼻を鳴らし、今までと反対側の肘掛に腕をつく。
そして、流し目のようにコンラートを見つめた。「『どうしても、認めたくないんだ?』」
「『だけど、全く心当たりがありませんので……』」心持ち、困ったように微笑んだのに、村田は相変わらず、愉しそうに笑っている。
人をからかうのが好きな人なのだ。今が一番、愉しいのかもしれない。
そうすると、これはただの暇つぶしとなる。いや、大概、この高貴な人に絡まれるのは、暇つぶしなのだが。そう、、、、相手にとって、ただの暇つぶしなのだけど。
「……『でも、そんなヒトが好き』
「………え?」だから、突然の言葉に驚いた。
笑みをやめて、村田を凝視すると、少年は相変わらず、くすくす笑っている。「猊下……?」
「何、降参なわけ?」
「え?」
「しりとり。次は『き』」
「…………」さっきまではただの悪戯少年がなりを潜めた。
漆黒の瞳は深遠さを増し、笑みも艶やかなものに変わる。
まるで、羽化した蝶のようで、コンラートは一瞬、思考を奪われた。「ウェラー卿?」
「……『嫌いじゃないんですか?』」
「『嫌いじゃないよ。ダイスキ。……うさんくさい笑顔の、目の前のヒトが、ね』」
「……………」くすくすと笑いながら言葉を紡がれる。
まいった。コンラートは肩を竦めて、村田の前に跪く。
そんな事を言われたら………降参して諸手をあげるしかないわけで。「降参です、猊下。胡散臭い笑顔も目の前にたっているのも俺です」
「さっきは否定したのにかい?」
「えぇ。そんな事を、俺以外に言われたら、俺は嫉妬のあまり気が狂いますから」にっこり笑って、村田の方に身を乗り出す。
ふっくらとした頬に触れると、くすぐったそうに身を捩る。「……しりとりも、、、降参かい?」
「えぇ、そちらも。次に言いたいのは、き、ではありませんから」囁くように言って、徐々に顔を近づける。
村田はそれをとがめようとせず、愉しそうに笑ったままで。「貴方を愛しています」
告げて、唇を重ねた。
FIN
初のコンムラっっ
どどどどどうでしょうか?(ドキドキ
でも、あずまのトコの腹黒コンビの性格をそのまんま受け継いでます(血
あぁ、イメージが違っても、ココロ広く、お願いしますっ!!
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070621 あずま
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