眠りの報酬

 

その場面に出くわした時、ヨザックは息を止め、グウェンダルは額の皺を深く刻んだ。

そこには、ソファに寝転んでいるコンラートがいる。
そこには、ソファに寝転んでいる村田健がいる。

問題は二人が重なり合って、眠っていることだ。

コンラートは自分の腕を枕にして、上向きで寝転んでおり、
村田はコンラートの胸に顔を埋めるようにして、眠っている。
ちなみに、村田が落ちないようにかなんなのか、腰にはコンラートの腕が回され、
村田の腕は、コンラートの首に回されている。

「……………」
「……………」

思わず、二人は立ちすくんでしまって、眠る二人を見つめること数秒。
はっとして我を取り戻したのは、ヨザックが先だった。
いや、グウェンダルは呆れていただけだったが。

「閣下が、コンラートを襲わないからっ!!」
「………」

グウェンは何もコメントしなかったが、額の皺が一つ増えた。
こめかみに指を置き、ふー、と深いため息が漏れる。
ヨザックは、冗談が通用しない上司に、心の中であきれ、再び、視線を寝ている二人に向ける。

「-------------で、どうします?」

 

 

 

その、半時前………

陛下とヴォルフが城下町ラブラブデートに出かけて、一時、お役目御免となったコンラートは、
近頃、悪友となってしまった村田健と午後の紅茶を楽しんでいた。

「ほう。これが睡眠薬ですか?」
「うん。チキュウサンだけどね。結構、協力」
「やはり、地球産のモノは魔族に何かしらの悪影響はでるでしょうか?」
「うーん、、、どうだろう? だけど、渋谷を見る限りでは、同じじゃないかな?」

ほら、地球産とは言え、眞魔国の魔族でもあるし。
ソファに深く腰をかけて、村田が面白そうに言葉を続ける。
音を立てず、カップをとると、一口、喉を潤す。

ちなみに今回、何故、睡眠薬があるというと、村田曰く、
『目が覚めたら、横に裸の義弟がっっ! 寝ているあいだに何があったのか?!』作戦
つまり、睡眠薬で飲ませて、キセイジジツを作ろうっとの事ラシイ。
で、面白そうだと乗ったコンラートと、地球から持ってきた睡眠薬をみていたのだ。

「………でも、微妙ですね。相手は生粋の魔族ですから」
「ヨザックで試してみる?」
「それはいい考えですが、あまり貴方に借りを作りたくないので」

素晴らしい笑顔で報復しあう二人。どうやら、二人にとってのヨザックはそんなモノのようだ。ヨザック合掌。
義兄のように額に皺を寄せ、悩むコンラート。
錠剤が入った小瓶を揺らし、日に透かせて中身をじっくりと見つめる。

そんな後

「一度、飲んでみましょうか」
「え?」

そう言って。
取り出した一粒を口の中に放り込む。
呆気に取られる村田を余所に、カップの紅茶で錠剤を飲み込んだ。

「即効性ですか?」
「うん。結構、利きが早いから、こっちで寝たほうがいいと思うよ?」
「よろしいですか?」
「うん」

じゃぁ、失礼して、、、
会話の中から、既に違和感を感じ始めた体に、コンラートはゆっくり立ち上がり、村田がかけていたソファに座る。
とろん、とした瞳がどこか艶めいて、村田は面白そうに見つめる。

「三時間ぐらいの奴だから、僕が側にいるよ。何かあっても、過去、医師をしていた記憶があるからね」
「頼りにしています。ですが………」
「ん?」
「………悪戯しないでくださいね?」
「んー?」
「………」

胸のうちを素直にいってみたが、村田はにこ〜っと微笑むだけで、約束しない。
やはり、ちょっと早まったかな、とコンラートは思い、むしろ、この薬だって、結局、こういう事を見越し、
この前のノロケの報復をしようとしているのでは、、、と勘繰った。
そして、そんな事、考えているとは気付かないはずなのに、村田が更に微笑を深めたことで確信にいたる。

と、いう事は、この薬は魔族の体に悪影響がないはずだな……

そして、悪戯されるのは目に見えた、といった所か。
急速に意識が失われていく中、コンラートは勝ち誇った微笑みを浮かべる大賢者に悟られぬよう、
彼が飲むカップに薬を入れた---------------。

 

何か人の気配がした。
と、思ったら、意識が覚醒しだした。

さすがに薬で眠っていたせいだろうか。
いつもなら、眠りの中でも覚えている周囲の気配の記憶が一切ない。
それだけ薬の影響が強い、といった所か。

浮上する意識の中、次に感じたのは胸元の圧迫感。そして、温かい体温。
多分、ソレは猊下。薬をいれたカップを飲んでくれたって事だ。悪戯は逃れたかも知れない。

ほくそえみながら、浮上する意識とともに、目を開ける。
ぼんやり映ったのは、天井。そして、灰色の何か

「え----------?」

薬のせいでそう見えたのか。
ふらつく頭を支えながら、再び、見つめてみると、ソコにはやはり灰色の髪。
艶やかなソレを伝ってみていくと、彫りの深い顔が見て取れた。
とおった鼻筋。薄い唇。そして、今は閉じられた、深い蒼の瞳。

思わず、疑問より先に、見蕩れてしまった。
我が義兄ながら、寝ている姿なんて、見た事が殆どない。しかも、これだけの至近距離は初めてかもしれない。

「……………」

まだ、心臓はドキドキと存在を主張していたが、とりあえず、周りを見渡す。相手を起こさないように。
村田はいない。胸元の圧迫感は、グウェンダルの腕。

「-------------え?」

そこに。

いつのまにか、肌蹴られた胸元。
そして、肌に散った赤い痕。

「……………」

これはどう捕らえればいいのだろうか?

正直、つけられた感触の記憶は全くない。
全くない………という事は、それだけ眠っていたという事で。
しかも、休憩とはいえ、軍人であり護衛官のジブンが。

「………貴方は、、、意地悪な人だ」
「……………」

眠ったふりを続けている人物に呟いてみたけど、相手はなんの反応も返さない。

本当に意地悪だと思う。
もし、起きていれば、その行為を続けてくれのただろうか?

いや、多分、そんな事を気にしてはいけない。
今回の事は、、、護衛官が深い眠りについていた事の罰であり、猊下と眠っていた事の………嫉妬。

「と、いう事にしておきますね」

コンラートは微笑み、囁いて、グウェンダルの額に口付けを落とした。
そうして、再び、居心地のいい場所に頭を置き、目を閉じた。

 

温かい体温に包まれ。

愛しい人に抱かれながら。。。。。

 

 

FIN

 

〜おまけ〜

 

「……………」

「……………ん…」

「……………」

「……………んんん?」

「あ、目覚めましたか?」

「え………? って何してるの?!」

「何ってナニですv」

「えっ? えっ? なんで??」

「なんででしょうねー」

「って、ゃっ! ちょっ……よざっ!」

「コンラートと寝ていた罰です。つーか、検分中です。ヤられてないでしょうね?」

「は???? なんで、ウェラー卿にそんな……っっっ!!」

「お口だけでは信用できないので、体にも聞くことにしますv」

「ま……っ!あっ! ぃゃ………んんっ!!」

 

 

ちゃんちゃんv(ぁ


れっつ、意味不明☆(キャッ
睡眠薬をなんて使うはずがない!なんて、突っ込んじゃあイケマセン
それはあずまが思っていることですから(マテ
ちょっとお間抜けな腹黒コンビを書きたかっただけなのです、ハイ
昨日まではらぶらぶ話だったのになぁ。。。

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070416 あずま

 

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