軽やかなノックに、どうぞ、と声をかけると、愛しい人の姿が現れた。
第二十七代魔王の宰相であり、わが身の義理の兄でもあるグウェンダルだ。
ちょうど磨いていた剣を傍らに置いて出迎える。

「こんな時間にどうしたの?」
「邪魔したか?」
「いいえ。もう終わるとこだったしね」

くすり、と笑みを零すと、グウェンダルの額の皺が少し深くなった気がした。
入り口で立ち話もなんだし、部屋の中に進め、自分は最近のお気に入りのワインを片手に取った。

「? 座ってくれていいんだけど?」
「いや……これを渡しに来ただけだ」

そういって、胸元から差し出したのは、小さな箱と小さな編みぐるみ。
俺は軽く目を見張って、次に微笑を浮かべた。

「まさか……貴方がホワイトデーを知っているとは思わなかったな」
「陛下に、グレタにもちゃんと返せよ、と言われてな」

あぁ、そういえば……
ユーリにバレンタインデーの事を聞いて、はりきって配っていたグレタを思い出す。
その時に自分もグウェンダルに一緒に作ったチョコクッキーをあげたのだ。

顔を見上げると、不機嫌そうな……その実はただ照れているだろう……表情。
それと見比べるように小さな箱を見つめた。
自然と浮かんでくる喜びに幸せな笑みが零れそうで。

だけど、、、、自分は欲張りだから。

「グウェン」
「なんだ?」
「知ってる? ホワイトデーは三倍返しなんだよ?」
「………コンラート?」

広い背中に、太い首に、両腕を回した。
少し皺が刻まれて入るが、端正な顔が目の前に現れる。
軽く目を見張っても、グウェンは腰に手を回し、俺を支えてくれる。

「編みぐるみと、この箱の中身と……グウェン、一つ、足りない。もう一つ」

自分が贈ったのは、チョコクッキーだけだけど。
後一つ、足りない。後一つ、もう一つ、欲しいものがある。

軽く見開かれていた目は、薄く細められ、小さな笑みとなった。
何処までも優しく、温かい瞳が、ゆっくりと近づいてくる。

俺は知らず、笑みを浮かべながら、静かに瞳を閉じた。
もう少しで………三つ目が貰えることに確信したから。

ふわり、と空気が動いた………。

 


アマアマデス!(ぐぐ
今回のコンセプトは三倍返し♪
バレンタインがなかったですが、、、それは妄想でお願いします☆

いつも、拍手、ありがとうございます!!

あずま

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