言質
久しぶりに晴れ上がったその日。
ちょうど、村田健----------大賢者は血盟城に訪れていた。と言っても、執務のためではない。
いや、執務はとうに終り昼から会議があるのだが、いかんせんもう一人の双黒の少年が必要な書類を書き込んでおらず、
ソレを待つために魔王の執務室にいるのである。
口にクッキーを咥え、手に古い書物を持ちながら。それを悔しそうに見つめるのは第二十七代目魔王渋谷有利であり、くすくす笑いながらも見守るのがコンラート、
そして、我関せずで執務を進めるグウェンダル。
三男であるヴォルフレムはユーリの傍らに腰を降ろし、書類の進み具合を見ている。
ちなみにギュンターは会議の遅延を調整しに出ている。
そんな中。
ぱたぱたぱたぱたぱた。
近づいてくる足音。
コンラートがそれに気付いて、扉から一歩離れ、皆が扉を見つめた。
その瞬間。ばん!
「猊下〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!」「…………ヨザ?」
「なんだ、それ!」
「…………グリエ……」
「…………」「ぷっ……!」
「猊下っ!!!」皆がぽかん、と口を開ける中、一人、村田は噴出した。
机に本を置くと、そのまま遠慮もなく大声で笑い出す。
それにつられて、コンラートが口元を手で覆い、ユーリが笑っちゃいけねぇ、と言いつつ、奇妙な顔になっている。それもそのはず。
観音開きに扉を開いて現れたのは------------何故かアフロになったグリエ・ヨザック。
ぶはっ、とユーリが我慢していた笑いを噴出した。「猊下の意地悪〜〜〜。グリエの髪を綺麗なカールにしてくれるって言ったのに!!」
「なんでー? 綺麗なカールじゃないかっ。ふわっふわっで面白いよ、グリエちゃんv」
「えーんえーん、猊下の意地悪ー」
「はははは、可愛くないヨー」
「え、えーん。いじめだ〜っ」本気泣きしだしそうなヨザックに、ぷぷぷ、と笑い、村田は傍らに置いた本を再び開いた。
コンラートとユーリが気の毒そうにそっと目元を覆う。
ヴァルフラムは案外真面目に、この二人は本当に付き合っているのか悩んでしまった。
ちなみにグウェンダルは我関せず……だが、額の皺が5mm程、深くなっている。誰も天下無敵の悪魔をたしなめる事もしてくれず、同情のマナザシを背中に感じて、
ヨザックは更にしくしくと泣き崩れた。「猊下の意地悪ーーーっ。今度からぐりえ以外をいじめてくださいっ」
それは何気ない一言だったのだが。
ぴくっと、本を持つ村田の指が揺れた。
眼鏡が光に反射して、表情が隠れる。
雰囲気が変わった村田に室内は驚くが、その中でも一番近くにいたヨザックは目を見開いた。
村田が静かに本を閉じる。「ふ、ぅん、、、。グリエちゃんはいじめて欲しくないんだね?」
「げ、猊下………?」
「……僕の愛情表現は苛めることだ。君も知っているだろう?
それを拒否するという事は、僕の愛情表現を拒否するという事で、僕の愛情がいらないという事になる」
「いや、それはっ!」
「って、事で、、、僕は振られたんだな。うん。じゃぁ、次は誰に------------」
「ぅわーーーーっ! 違います!違います!ごめんなさい。俺は猊下のものです。愛してますよ、猊下っ!!」がばり、とヨザックは勢いのまま、村田に抱きついた。
その動きを予測していたのだろう。
村田はさっさと机に本を置いて、大人しく抱きしめられている。そこまで成り行きを見守っていた三人(相変わらずグウェンダルは書類と格闘していた)は、
結局の所、痴話げんかか、と肩の力を抜いた。------------だが、それで終わらないのがこの大賢者村田健猊下である。
彼はヨザックが落ち着いたのを見計らい、その頬を両手で包みこんだ。
ふわり、とこみ上げる微笑を浮かべて。「僕は迷惑じゃない?」
「迷惑じゃありません」
「本当に?」
「猊下」
「じゃぁ------------」少し、舌ったらずな言い方で。
少し、首を傾げて。
--------------だけど、嫣然と微笑んで。「いじめてって言ってごらん?」
「……へ?」
「だって、そういうことだろ? よざ」ひくり、と喉が動いたヨザックだが、そんな事、全く気にもせず、四千年の歴史を刻む大賢者は、
頬を支えたまま親指で、ヨザックの唇をなぞった。「それとも僕に想われるのは迷惑かい?」
「そんなわけはっ………!」
「じゃぁ…………」
「……………」
「ヨザック?」
「………い、いじめてクダサイ」
「ん」ヨザックの震える声に満足そうに微笑むと、村田は眼鏡の位置を戻し、ヨザックの体から離れた。
そのまま、ぽかんと見つめている観客を余所に大きくアクビをする。
そして、肩をならして、立ち上がった。「さて、そろそろ僕は会議室に行くから。
あ、ちなみにそのアフロは一週間とれないからv」
「ええええええええええええっ?!?! 俺、明日から任務がっっ!!」
「じゃぁね〜〜〜〜v」あー、愉しかったv
ぱたり、と閉まる扉の音と共に、村田の愉しそうな声が響いた。
猊下……と呟くヨザックの伸ばされた手が虚しさを更に引き立て。ぽむ、とコンラートが肩に手を置く。
次にユーリが。そして、ヴォルフレムが。
グウェンダルはそれに加わらなかったが、彼とは思えないほど、生優しい目でヨザックを見つめている。「……………絶対っ、、、絶対、この仕返しをしてやるっ!!」
待っててよ、猊下!
そう叫んで、ヨザックも扉から駆け出していったが、残った四人は心の中で、倍返しを喰らうからやめとけ、とはもった。
FIN
リアルネタで書いてみましたv
いやぁ、なんだか、最近、ばかっぽい話が好きみたいで(笑
書いてて愉しかったですvこの復讐編をこっそり書こうかと思っていたり☆
ちなみにそれは裏です〜〜
予定は未定ですがvvvお気に召されたら、どうぞよろしくお願いしますv → web拍手を送る
070222 あずま
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||