今日も愉しく執務中(嘘。
ギュンターがいないから、更によくはかどったり。
多分、俺………第二十七代目魔王である渋谷有利原宿不利がいないか、もしくは単独のギュンターであれば、
有能なのかもしれないけど。
俺がいると、サイン一つ一つを褒め称えるから、まったく仕事がはかどらない。
嫌いじゃないが、ちょっとウットウシイ。
そんな訳で、いつもより早くサインが出来るわけだが。
室内の空気がオカシイ。
俺の右隣の机で補佐をしながら、他の執務を行うグウェンダル。
いつもと同じく眉間に皺を刻む様は相変わらずで、そろそろ慣れてきた。
まぁ、そこまではいい。
---------------何故、村田がいるんだ、ココに?
村田は俺の右に座り、机にべったり伏して、紙ヒコーキを作っている。
そして、出来上がると、ゴミ箱に向けて飛ばして遊んでいる。
どうせなら手伝って欲しいのに、奴は笑顔で『それは君の仕事デショ?』と相手にもしない。
そのくせ、読まずにサインしようとすると邪魔してくる。
いや、俺が悪いんですけどね?
だけど、人のやる気をなくさせるその行為はどーなの?
四つ目に完成した紙ヒコーキをほいっと投げ、ひょろひょろっと飛んで、ぱたり、とゴミ箱にたどり着く前に落ちる。
………なんで、グウェンダルは何も言わないんだろう?
「ねぇ、フォンヴォルテール卿」
「………どうしました?」
「どうして、ウェラー卿を襲わないの?」
「ぶっ!!」
ななななななななななんて事聞いてんだ、ダイケンジャーっ!!
そういう事は面と向かって聞くことかっ?!聞くことかっ?!
ちらりとグウェンダルを見ると、サインしていた手が止まっている。
視線を合わせるのが怖くて村田を見ると、問題発言したくせに、新たに紙ヒコーキを作っている。
……………そんな事よりもこの沈黙のセキニンを取ってください。
むしろ、ここから出させてクダサイ。
「そのような事は公言するものではないでしょう」
いや、その返答もなんか微妙な気がするんですけど。
「うん、そうなんだけどね。そろそろ被害が拡大していると言うか」
「被害?」
「うん。この前、ヨザックを貸したんだけどね」
……………貸した?
貸せるものなのか? つか、貸すってナニ?
「干からびて帰ってきたよー。いやぁ、使い物にならないぐらいに?」
何故、疑問系。
へらへらっと笑う村田に、グウェンダルが深いため息をついた。
「最近、アレの様子がおかしいと思ったら………猊下の入れ知恵だったんですね」
「僕とウェラー卿だけどね。だけど、全く反応がないみたいだから………うん、ちょっと、悔しいってカンジ?」
そして、村田がにこり、と笑う。
なんだ。
ナンダナンダナンダ。
室内の雰囲気が一気に変わったんですけど。
なんだか、子供の時間は終わったよ?ってクリスティンの声が聞こえた気がするんだけどっっ!!
ああぁ!俺はまだミセイネンだからっ、子供だからっっっ、だから、この部屋から出してっ!!
だが、さすが、と言うか、すごいというか、グウェンダルはそんな村田を一瞥して、書類に視線を戻した。
「今はそんな事を討議する時間ではないでしょう?」
「不能なの? 強そうなのに」
「ぶわふんっ!」
は、鼻から何か出た!
慌ててティッシュを取る俺に、グウェンダルが視線を上げる。
視線をあわせるのが怖くて下を向くと、深いため息が聞こえた。
「猊下」
「ね、どうして?」
「……どうしてそこまで聞きたがるんです?」
「んー、だってねぇ、、、戦友が困っていると助けてあげたいじゃない?」
………戦友、なのか、、、戦友。。。
「それに………ほら、僕が落としたくなるしv」
「冗談でもやめていただきたいですね」
「うわっ、速攻? そういわれると本気でしたくなるじゃないか」
「……………」
グウェンダルがそれはそれは深いため息をついた。
眉間の皺が、それはごめんこうむる、と言わんばかりだ。
数秒の逡巡を見せたが、グウェンダルはそのまま口を開いた。
「………猊下はそうおっしゃるが、コンラートは本気ではない」
「本気じゃない?」
本気じゃない?
そうか? 俺から見ても、恐ろしいほどの気合とか気合とか気合を感じたんだか……
「そうだ。本気ならとっくに直接言うか行動を起こす」
「落としたいって言ってたけど?」
「アレが結果を得るために手段を選ぶものじゃない事は知っておられるだろう?
実際は今のその現状が愉しいだけだ」
「ふぅん。。。」
まぁ、、、確かに。
コンラッドが本気なら、笑顔でやりましょう、とか、さっくりとグウェンダルを押し倒すことぐらいやりかねない。
つーか、一度、やってしまえば、その後にじっくりと落とそうとするだろう。
村田もグウェンダルの言葉に納得したのか、手で顎を触れ何か考えている。
「それに。。。。」
ふ、とグウェンダルの声が少しだけ、本当にほんの少しだけ柔らかくなった。
村田もその声に反応して視線をあげる。
「ああしている、、、、俺の為に必死になるコンラートを見るのも愉しい」
「………………」
「………………」
「もう少し堪能させてもらいたいからな」
そう言って、グウェンダルは話は終わったとばかりに、書類にサインをし始めた。
隣で村田は動きが止まったままだ。
ちなみに俺も。
………今のは、所謂、ノロケって奴だろうか……?
「まさか、惚気られるとは思わなかったね………やられたよ、ウェラー卿……」
沈黙の後、少し低く話す村田の声が響いた。
ゆっくりと立ち上がり、眼鏡をの位置を戻している。
ちなみに眼鏡の向こうの瞳は見えない。硝子がきらり、とはかり、口元の笑みだけが深く刻まれていて、、、、
怖いぞ、村田!!
「この仕返しはたっぷりさせてもらうよ、、、、待ってろよ、渋谷!」
「えっ、俺?! なんで??!!」
急に名前を呼ばれて目を大きく開いて見せたが、村田は高笑いと共に部屋を出て行った。
後に残ったのは、同じ部屋にいるとは思えないほど、我関せずのグウェダルと手を伸ばしたままの俺。
おかしい。
どう考えても俺は無実だ。無実。いや、それ以前に何故巻き込まれているんだっ?!
そう叫んで見せても、グウェンダルが答えるはずがなく、俺はこのまま無実の罪を甘受しないといけないのだろうか?!
いや、それはありえないし!!
「どうしたんです、陛下? 腕が疲れませんか?」
「陛下って呼ぶな、名付け親!」
村田が出て行って立ち代るようにコンラッドが入ってきた。
手には果物が盛り付けられた容器と紅茶のセットが乗っている。
そういえば、さっき、休憩の準備をしに部屋を出たんだった。
「そうそう、ユーリ。面白いお酒が手に入ったんだ。飲んでみない?」
「面白いお酒? つか、飲まないよ。健康一番!」
「そういうと思った。いえ、人間の世界のお酒だから子供だましかも知れないんですけど、、、
一本で一センチ身長が伸びると言う………」
「えぇっ?! 嘘うそウソ? 本当? マジで? マジモン??」
「マジモン……? うーん。本当か効能は試した事ないのでどうともいえませんが、面白そうで買ったんですよ。
度数も高いほうではありませんしどうです? ためしに一本」
いつもの休憩するソファーに紅茶のセットを手際よく行うコンラッド。
俺はソファーに座り、淹れたての紅茶を貰った。
でも、本当に身長が伸びるんだろうか?
RPGならタネとか飲み物で能力が上がるアイテムがあったりするから、本当にあるかもしれないし。
「よっし、じゃぁ、少しだけ飲んでみよう!」
「じゃぁ、夕食後に出す事にしましょう」
コンラッドの事だ。俺の体に悪いものを薦めるとは思えないし。
俺は爽やかな微笑を浮かべるコンラッド尻目に、果物をかじる。
「グウェンもそろそろ休憩したらどうかな?」
ほんの少しだけ、俺とは違う声音で、コンラッドはグウェンダルの分の紅茶を手に立ち上がった。
これが一流の軍人であるせいなのか。
ただ歩き身を翻すだけで洗練された動きとなる。
紅茶をすすりながら、何気なく視線で二人を見つめると、まだ書類に格闘するグウェンダルとそれを阻止しようと動くコンラッドが目に入る。
最初はこの二人がって驚いたんだがなぁ…………
グウェンダルの時だけ、コンラッドは少し甘えたような表情を見せるので、これはこれでアリなのかも、と納得してしまう。
いやはや、眞魔国になじんできたものだな、俺も。
思わず達観していると、二人の戦いの決着がついたようだ。
つまり。
「休憩しているときぐらい、俺の顔を見てくれませんか?」
「何を言っている。休憩以外でも見ているぞ?」
なんて、甘い言葉を吐き出して。
あぁ、確かにコンラッドは楽しんでいるかもな。
グウェンダルの答えに一瞬の沈黙を落として見せたが--------------。
言葉の意味を捉えて、誰も見せない微笑を浮かべて見せたのだから。
ゴチサウサマ(合掌)
FIN
びば勢い☆(こっちもか
いやぁ、、、途中、グウェ村に行きそうな勢いで、最後、コンラッドといちゃつかせてみました(笑
なんだか、よくわからない人間関係になってきましたが、基本はグウェコン+ヨザムラなのでv
ちょっと腹黒受けコンビが過激派なので、なんだか、ほのぼのといかない(笑
でも、こんな人間関係も書いてて愉しいですv
お気に召されたら、どうぞよろしくお願いしますv → web拍手を送る
070219 あずま
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