可愛い嫉妬

 

 

 

「この尻軽が!」
「だから、違うって言っているだろう? 『寿司』というのは食べ物の事なの!!」
「ふんっ、大体、ユーリは婚約者である僕の事をオロソカにしすぎなんだっ。もう少し、僕の事を考えろ!」
「はぁっ? 何を言っているんだ?? お前のことばっかりで嫌になるぐらいだって言うのにっ!!」
「嫌になる? 嫌になるだと!!!!」
「ぅわっ、ちょ、ちょっと、炎術は反則行為だろう!!!」
「黙れっ!!!!」

鬼気迫る顔で翳した指先に炎の粒子を集め始めたヴォルフ。ユーリが慌てて豪奢な椅子から腰を浮かした。
すると、それを見計らったかのように、机を指先で弾く音。
この部屋にいる最後の一人、グウェンだ。

そう、ここは執務室。
ギュンターがいない事でカンヅメ状態にされているユーリと、それを補佐するグウェン。護衛の俺に、、、ヴォルフがユーリの横に座っている。
一応、ヴォルフはギュンターの代わりに書類で読みにくい所や状況の説明にユーリの側におり、未熟ながらもそれなりにこなしている。
ただ、すぐにこんな状態になっているので、それを止めるのが俺の仕事となっていた。

「ヴォルフ。ここで炎術は駄目だろ? 陛下、その書類が終わりましたら休憩にしましょう。今日のデザートはイチゴのケーキでよろしいですか?」
「ふんっ、わかっている!」
「陛下って呼ぶな! でも、ありがとなっ」

嬉しそうにはしゃぐユーリとは対照的に、拗ねたように頬を膨らませ顔を逸らすヴォルフ。
だが、すぐにヴォルフは書類にとりかかるユーリの補佐をする為に椅子に座った。

どちらも可愛いくて、自然に頬が緩む。
結局、そのいいあいもただの痴話げんかでしかなく、、一つの恋人同士のコミュニケーションだ。
先程の喧嘩も何処吹く風で二人は肩を寄せ合い、微笑ましい。
思わず、ちらり、とグウェンの方を見ると、彼は既にどうでもいい事らしく、書類に専念していた。

少しだけ、誰にも気付かれないように、ため息をつく。

彼らの恋愛は初心者そのもので、まったくの駆け引きとか見られない。
それが故に純粋で、、、無自覚な告白が耳を擽る。
別にそれが羨ましいというものではない。
こちらは100歳を超える大人二人。
それなりに互い、恋愛経験はあるはずなのだが。

……………この一ヶ月間でキス一回とはどんな話だろうか?

思わず、じっと見つめてしまったのか、彼が視線をあげる。
相変わらず、そこに存在するのが当然の眉間の皺。
一度、あそこにペンをはさんで見たい気がするのは、俺だけであろうか?

あ、そうだ。

「グウェン」
「なんだ?」

「可愛い子猫と俺と、どっちを選ぶ?」

「「………は?」」
「…………?」

あ、眉間の皺が一つ増えた。

年少組みのカップル二人がぽかんと俺を見ているが、とりあえず、笑顔でスルーしよう。
グウェンがどう答えるか楽しみだ。
彼も年少組の視線を気にせず、手に持っていたペンを揺らしただけだ。

「突然なんだ、その質問は?」
「ちょっと、気になってね」

癖のように、肩を軽くすくめると、グウェンは一度視線を窓の外に投げ、数秒の沈黙を作る。

「………小猫は保護する存在だろ? だが、お前はお前だ」
「……………答えになってない気がするんだけど?」
「お前にとっての小僧……陛下と同じだ。いや、同じじゃないな。私とユーリではお前はユーリを選ぶだろう?」
「………否定できないな」

痛いところをついてくる。
全くの表情筋を動かさず笑顔を保ったのに、グウェンは微かに口元に笑みを浮かべた。

「それでいい。私はそれを理解しているし、そんなお前を俺が選んだのだ」

目元の皺が深くなる。
してやられた。
こうなると俺は苦笑を浮かべるしかないわけで。

「参ったな………貴方には敵わないな」
「当たり前だ。私はお前の兄なのだから」

そして、余裕の笑み。
………多分、惹かれたのはこんな姿からだと思う。
この人は。
決して揺るぐことはないのだろう。
…………揺ぎない腕で、転びそうな俺でさえ支えてくれるのだろう。

 

「……ああああの、こんらっどサン?」

あ、忘れていた。

「どうしたんです、ユーリ?」
「先程のやりとりは一体………?」

見たくなかったモノを見てしまったような心境なのか、それとも聞きたくない真実を知ってしまった顔で、
ユーリがへらっと笑って聞いてきた。ちなみに隣のヴォルフは呆然としている。
そんな二人に、くすり、と微笑を落として、

「言葉遊びですよ。どうやら、俺のほうが負けてしまっていますが」
「…………へ?」
「さて、そろそろ、休憩の準備をしましょうか。陛下、今日は日も高く外も温かいですから、テラスに準備しますね。
その間の警備は頼んだ、ヴォルフ」
「え? ………ぁ、ああ」
「それではユーリ。頑張ってくださいね」

通りすがりにヴォルフの肩を叩き、ユーリには特別な微笑を浮かべて。
そして、最後に愛しい人へ言葉をかける。

「グウェン、それでも愛しているのは貴方だけですよ?」

今度は年少組みに聞こえないように囁くと、
グウェンはペンを動かす指を一瞬だけ止めて、、、口元に微かな笑みを浮かべた。
知っている、そう答えるように。

 

 

元々、お互い忙しい身で………兄弟という間柄のせいもあるだろうけど。
たまにはこうやって、言葉だけでも重ねたい。
あぁ、なんだかんだと言って、年少カップルが羨ましかったのかも、なんて考えて。

心地よい風に心をまかす。
それでも負けたままは悔しいので、休憩時間にこっそりと小猫を持ち込んでやろう。
そうして、鼻の下を少しでも伸ばしたら……………

 

とっておきのキスをもらおうかな?

 

 

fin


こ、この、らぶらぶかっぷるめ!!(くわっ
って言いたくなるような感じで描いて見ました。どどどドデスカ?(誰に

そして、あまった(まてこら)陛下はぷーとらぶらぶにしてしまいました。
ぷー陛下か陛下ぷーかわかりませんが、多分、ここでもヨザムラはヨザムラv(出てないですが

061216 あずま

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送