月の明かり頼りに歩き出した おぼつかぬ足取り
白い冬も青い夏もそっと踏み出した

いつの間にか迷い込んだ深い森は
暗く湿ったまま止まった

苦しくてさけぶ声 届かない 何を待つ?
蜘蛛の糸? 青い鳥?救いを求め天を仰ぐ

ここには先を記す地図はない そして気づいたこと
旅は「未来」という名の終わり無いものだった

見渡せばそこにいくつもの足跡
誰もが通り行く場所なんだろう

身を屈め 泣いていた 音も無いこの深い森に怯えて
耳を塞ぐと 確かな鼓動だけ聞こえた

過ぎて行く時間にも 景色にも変わらないもの
僕たちはここに居る 呼吸を止めずここに居る
そしてまた歩き出そう 先はまだ果てなく永い
僕たちはまだ森の中 抜け出そう 陽のあたる場所へ

(ポルノグラフティー 作詞作曲・岡野昭仁 音のない森より)

 

 

 

 

音のない森 最終話

 

 

 

「グリエちゃん、お茶」
「はーいv」
「あ、やっぱり、紅茶で」
「はーい」
「あ、砂糖はイラナイよ」
「……はーい」
「あれ、イチゴのケーキはつけてくれないの?」
「………はいー」」
「あ、シマロン饅頭も食べたいなぁーv」
「………猊下?」

右へ左へ動いていたヨザックの動きが止まる。
ちらり、と視線を向ければ、それはそれは機嫌のよさそうな双黒の賢者がにこにこ笑っている。
それはそれは可愛らしい笑みなのだが、三つ目の黒いものがヨザックには見えて、すごすごとシマロン饅頭を準備しに歩き出す。

二人がいるのは、迎賓館の一室。
当然、猊下を迎える部屋として、一番、質のよい部屋が選ばれていた。
その部屋は一室が三つに分かれており、リビング・書斎、そして、寝室に分かれていた。
当然、村田は寝室にいた。高級なクッションを幾つも背中にあて、その両手に本を開けて。

 

あの日。
ヨザックが村田を襲った日から、五日たった。
コンラートの部屋から出たあと、村田は熱を出して寝込んだのだ。
その熱は三日下がらず、その間、ずっとヨザックが看護していて、熱が下がってからは、ずっとこの調子なのだ、村田は。
でも、それも仕方ない。村田はいまだにベッドから動けないのだ。そこかしこ、痛みがまだ残っていて。
一度、看護班に治療を頼もうかと思ったら、当人が大反対したのだ。恥ずかしいから嫌だと。
その時、二人で結構、大きな騒ぎになったのを思い出して、ヨザックはばれないように笑う。
すると、今度は右の唇のあたりの傷が引きつって痛みが走る。

これは魔王陛下に殴られた痕。
そう。事情を知らず、体調を崩したと見舞いに来たユーリが、村田に声をかけ、そして、ヨザックを見て、
殴りつけたのだ。ちゃんと、歯を食いしばって、と言い、これで許してやる、と、珍しいぐらい真剣な顔をして。
さすがに村田も驚いていた。特に、何かあれば相談に乗るから、といわれたときは、年相応にきょとんとして、
その後、全開の笑顔を見せたのだ。思わず、こちらの嫉妬心が疼いてしまうほどの。

その後、気の利く主君は、ヨザックの有給休暇をもぎ取ってきた。
そして、寝込んだ村田の看病している------現在に至るのである。

 

「ヨザック」
「はい?」

不意に声がかかる。ドアノブに手をかけたまま、ヨザックが振り返った。
珍しく、村田が少しだけ首をかしげて、どこか迷った瞳をしていた。
いいよどみ、いくつか口を開く動作に、ヨザックは体ごと、村田に向き直る。

「僕は……」

そして、口を開いた。

「僕はキミが好きだけど、それでも僕の中の至上の存在は渋谷有利だ。僕は彼の為に生きるし、彼以上の人はいない」
「………」
「それでも、、、いいかい?」

卑怯だと、思った。
今になって、それを言うのは。
この手に入れた、……二度と手放せないと思った、今、この時に言うなんて。

だけど、、、何故か、村田の言葉を理解できた。
彼の絶対は魔王であるユーリであり、その存在以上に自分はなれないのだと。
いや----------そういう比較するような位置づけでもないのだ。ユーリ陛下と自分は。

それを理解できるのも、身近にそんな存在を知っているからだろう。
自分のすべてで魔王を守っており、それを恋人の理解を得て、そのうえ、その腕に守られている幼馴染を。

一度目を閉じて、開く。
そこには、不安半分、恐れ半分………をポーカーフェイスに隠す愛しい人がいて。
その表情こそが、自分の答えだと思った。その-----賢者としての表情ではない顔を、、、、愛しいと感じたことこそが。

ヨザックは、なるべく、愛しい存在をおびえさせないようにと、静かに近づき、傍に跪いた。
そして、その自分より小さな手をとった。

「いいですよ、猊下。本当は-----よくないですけど」
「……………」

最後は、少し、声が小さくなって。
驚き、軽く眼を見張る村田に微笑みかける。それは、多分、不器用な笑みになったと思うけど。

「猊下は、俺が好きですか?」
「うん、好きだよ」

返事がすぐ返された。
それだけで、嬉しい。それだけで、物足りるものではないのだけど。

だけど。

「俺も、、、好きです。愛しています」
「ヨザック………」
「俺の中ではそれが全てなんです。貴方の傍に入れること。貴方を抱きしめられること。
それが………全てなんです」

全てを奪いたいと、今でも思っている。腕の中に閉じ込めて、貪り食ってしまいたい。
だけど、それと同じぐらい、今、こうして傍にいてくれるだけで満足することが出来る。

言葉だけでは、今、胸のうちにある幸福感を伝えられない気がして、ヨザックは微笑んだ。
恭しく握った手を持ち上げ、その甲に唇を落とした。

「……君のその思いが、僕が僕でいれるんだ」
「……猊下?」
「四千年の記憶は、自分で思う以上にもてあましているんだ。時折、その記憶に飲まれそうになる」

突然の言葉に顔を上げると、村田は顔を伏せていて、その表情を見ることは出来ない。
覗き込んでみようか、ヨザックが悩んでいると、ぎゅっと手を握り締められる。

「だけど……君を想うことが『村田健』である自分を自覚できて、君が僕を想ってくれることで、『村田健』が存在する事を実感できる」
「………」
「……渋谷が僕の存在意義なら、君は僕にとって必要な存在なんだ。言い訳かも知れないけど………君と渋谷は違うから」
「猊下……」
「好きだよ、ヨザック」

静かに上げられた村田の瞳は涙に濡れていた。
驚き、動きが止まったヨザックに、村田は微笑みかけた。

本当は、最上級の告白をしてあげたいんだけどね。まだ、、、照れちゃうから。

そう続けた村田を、ヨザックは攫うように抱きしめた。
一瞬、痛みのせいか、体をこわばらせたが、村田もヨザックを抱きしめ返す。

「好きです、猊下。大好きです。愛しています」
「うん……うん、、、うん…」

 

繰り返される睦言に、村田はくすくす笑いながら、何度も頷いた。
その様子があまりにも愛しくて、、、ヨザックは、その小さな頬を包み、ゆっくりと閉じていく瞳を見つめながら、
愛の言葉とともに、唇を重ねた。

 

 

 

FIN

 


やっと、オワターーーーーーー!!!(土下座
本当に長いことお待たせしました、、、つうか、待っててもらえただろうか(わたわた
やっと、完結です! 延べ、二年かかっているよ、あずま

マ王にはまったときからお気に入りの二人。その時から、このネタを持っていたので、
期間が開いたとはいえ、完結できて良かったですv
今まで書いているヨザムラのベースはココにあるので、、、、

こんな風にくっついている二人(妄想)で書いていきますので、
これからも、よろしくお願いしますvvvv
ちなみにこの題名はポルノの『音のない森』がイメージでした
勝手に歌詞をのせたら、だめだっただろうか。。。誰か教えてください><

感想がもらえると、とても嬉しい一品です(ぁ

お気に召されたら、どうぞよろしくお願いしますv → web拍手を送る

080730 あずま

 

 

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