抱きしめる。
十一月もあと僅かとなると、寒さが身に染みてくる。
吐く息は白くなり、衣服は厚くなる。
夏の蒼い空を彩った木々たちは、もの悲しく感じさせる色合いと変化をとげ、この後訪れる本格的な冬の準備をしだす。それは眞魔国でも同じ事。
城の中にいれば、、、特に魔王がおわす所にもなると、暖は調えられ、寒さを感じさせないが。
ちょっと気まぐれに中庭に降りようとすれば、嫌でも寒さを自覚できる。
第二十代目魔王渋谷有利は、中庭に出た途端に体を嬲った風に、小さく体を振るわせた。
「もう、冬だなぁ………」
見上げた空。太陽はもうすぐ夕日に移り変わろうとしている所で。
これから更に冷え込んでいくことが想像できる。
特に中庭に用事があるわけでもなく、
ただ、執務室に戻ろうとした時に覗いた窓から、赤や黄色に染まった木々に無意識に誘われただけだ。秋、と言う季節は、どこか心をもの哀しくさせる。
らしくないな、と、ユーリは頭をかいた。
多分、こんな気持ちにさせられるのは、賑やかな仲間がいないからかもしれない。
自称婚約者のヴォルフは統括地に戻っているし、ギュンターも所用で城を出ている。
村田は神出鬼没だし、ヨザックは任務で出かけているらしい。後は-------------------。
「陛下。そんな薄着で外に出ていると、風邪をひきますよ?」
「………陛下言うな、名付け親」少し頬を膨らませ振り返ると、すいません、と言いながら、名付け親であり、護衛のコンラッドが立っていた。
あいも変わらず爽やかな微笑を浮かべて。癖といい続けるコンラッドをユーリは軽く睨んでから、再び、中庭へ視線を移した。
風は肌に冷たい。
だけど、何処がそれが気持ちよくて。あぁ、憂鬱に浸っているな、と、自分で感じながらも、もう少しそのままでいたくて。
コンラッドが少し眉を潜めたのが振り返らずともわかる。
多分、この寒さに城内に入れようか、それとも上着を持ってこようか悩んでいるのだろう。
そんな戸惑いも、ユーリは愉しく感じて、気付かないふりをする。
---------------------------------と。
「ぇ………?」
ふわり、とどこか甘い………匂いが鼻をくすぐった、と思った瞬間。
後ろから体が抱きこまれた。
温かい腕。逞しい胸元。
ぎょっとして見上げた先には銀の散らばった細められた瞳に出会って。「ココココココココンラッドサン?!」
「はい、なんでしょう。ユーリ?」にこり、と微笑が振ってくる。
その笑顔を見て、ユーリは体から力を抜いて、とん、と、後ろにもたれかかった。
結局、この名付け親は自分のやりたい事をするのだ。
抗った所で、この微笑みに負けてしまうのは自分なのだから。
空に赤みがかかってくる。
風は更に冷たさを増して。触れていない所が寒さに震える。
だけど、反対に触れた所の温かみが強く感じて、人肌が心地よい。「コンラッド」
「どうしました?」
「………明日には皆、戻ってくるかな?」
「えぇ」貴方がここにいるから。
ふわり、と笑った名付け親。
それに心が元気付けられて。
肩に回った腕に両手を置いて、微笑を浮かべる。「それにしても-------」
「ん、どうしたんだ?」コンラッドの声音が変わったに気付いて、ユーリが振り返る。
視線を逸らして少し真顔のコンラッドにユーリが戸惑っていると、それに気づいたのか、ふっと微笑を落とす。「コンラッド?」
「いえ、、、、、、、。
いつか貴方に、俺さえいれば寂しくない、と言わせたいなって思いまして」
「・・・・・・・っ!?!?!?」
「覚悟しておいてくださいね、ユーリ?」そういって、目蓋にひとつ、口付けが落とされる。
ユーリは驚きの表情で体を固まらせた。その初々しい仕草にコンラッドはくすくす笑みを落とす。
そして、固まるユーリを誘導するように、腰に手を添える。「さぁ、本格的に寒くなる前に部屋に戻りましょう。………手もこんなに冷えている」
反対の手でユーリの手のひらを絡めれば。
ぱっと、手が離される。「お、おれ、先に行くから!!」
「ユーリ?」振り返ることもなく、猛ダッシュで駆け出す。
夕焼けに染まった空が、影を長く伸ばして。
顔に熱が集まったのは、寒さが身に染みたから。
心臓がドキドキしたのは、憂鬱から一気に現実に戻ってしまったから。
ただ、それだけの事だから
-----------------------本当に?
Fin
………片思い?(首かしげ
本当はもう少し明るい感じになるはずだったんですが、
何故かアンニョイな感じに。
暗いイタイを書きたい時期だからかなぁ(笑061128 あずま。
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