おやすみ、の前に。
ゆっくりと寝台が沈んでいくと同時に零れた寝息に、村田は小さく笑みを零した。
撫でていた手を退け、ぽんぽん、と布団を叩く。
完全に眠ってしまった親友は、枕に顔を埋めて動かない。
くすり、と笑みを一つ。
そうして、窓の外に視線を移す。
「ヨザック」
小さい声が部屋に響くと、窓からオレンジ色の髪が動いた。
「あれ? 気付いていました?」
「ん。最初に気配を感じたのは、窓の外だったからね」
小さい声で二人、言葉を交わす。
ヨザックはベランダから体を滑り込ませ、足音を立てず、ユーリの反対側から寝台に足をかける。
「猊下」
「ん………」
肩を引き寄せられて、触れるだけの口付けが交される。
冷たい腕と唇に、村田は眉を潜めて、頬に手を当てる。
「中で待てばよかったのに」
「猊下をずっと見ていたかったんですよ」
「………君は馬鹿だね」
「猊下の事に関してだけです」
再び、頬に、目蓋に口付けを落とされて。
「で、ウェラー卿は今は何処に?」
「多分、陛下の部屋に入って………いない事に気づいた所じゃないでしょうか?」
「ふぅん」
「どうして戻っていると気付いたんです?」
「ウルリーケに聞いた。場所を聞いて、、、普通なら明日の夜につく。急げば朝に。でも、ウェラー卿ならこの夜につくと思ってね」
渋谷がココにいるから。
「ヨザック。ここにいる事をウェラー卿に伝えて」
「迎えに来てもらうんですね」
「いいや、ここで、皆で寝るんだ」
「……………え?」
ぽかん、とヨザックが口元をだらしなくあけると、村田は悪戯な微笑を浮かべた。
「渋谷と僕をほおっておいた罰。お互いにもんもんとしてくれる?」
「もんも…………」
「ヨザック、返事」
「はぁぃ………」
折角、冷えた体を温めてもらおうと思ったのに。
がくり、とお庭番は肩を落として、寝台から降りた。
今頃、焦っている幼馴染を呼びに行くために。
「あぁ、ヨザック」
「なんです?」
「おかえり」
ふわり、と微笑む村田の顔は、多分、ヨザックしか知らない顔で。
思わず、ベッドに舞い戻ろうとしたら、そこには無邪気に眠る魔王がいて。
「………ただいまです」
ヨザックは頭をぽりぽりかいて、ため息をつきつつ、部屋を後にした。
村田は目で追いかけて、くすり、と笑みを落とす。
そうして、ベッドにもぐりこみ、すでに眠っている親友に声をかけた。
「おやすみ」
「で、こういう事になったのか」
「……もんもんして、だそうですよ?」
「………………」
「………………」
「………………」
「で、どうするんです?」
「猊下の言葉に逆らえるのか?」
「……………無理」
「だろ? それに………こんなによく眠っているのを動かすのは忍びない」
「ぅっわー、、、それがルッテンベルグの獅子といわれた男の顔ですか? ぐずぐずに蕩けていますよ」
「何か言ったか?」
「……何もイッテマセン」
「じゃぁ、決まりだな」
「………………」
「………………」
「……こんな事になるから、陛下が入ってくるのを様子見ず、さっさと猊下を押し倒しておけばヨカッタなぁ………」
「全くだ」
「……………」
「……………」
「……………寝るか」
「……………そうですね」
Fin
なんだか、すごくらぶらぶなカンジが?
でも、猊下は猊下ですから(何
次はコンユー+ヨザムラで、それで終わりデッスv
061113 あずま
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