おはよう。

 

その日、久しぶりに血盟城に戻り報告書を渡すと、直属の上司に猊下を呼んで来て欲しいと頼まれた。
どうやら、報告内容で相談したい事項が出来たらしい。
まぁ、その内容を知っている自分としては、納得できる事柄だが。
昨日から用事で血盟城に来ているという猊下の部屋は、陛下の部屋の近くにある。
まだ、鳥のさえずりが聞こえる廊下を歩いていると、賑やかな声が中庭から聞こえた。
窓の外を覗いてみると、そこに陛下と護衛がいて、どうやら今からロードワークとやらに行くとこらしい。

猊下の部屋の前に立ち、護衛の人間に軽く目で挨拶すると、軽くノックを三度繰り返す。
返事がない。
まぁ、仕方ないかもしれない。
まだ、朝早い。
こんな時間に高貴な人間で起きているのは閣下と隊長、そして、陛下ぐらいなものだろう。

「猊下、入りますよ?」

カチャリ、と扉を開けると。そこは闇に支配された世界。
きっちりカーテンは閉められ、光源は自分が開いた扉のみ。
寝台に一つ分の山とサイドテーブルには黒ぶちのめがね。
思わず足音を、気配まで消して近づくと、枕に頬を押し付けて眠る少年がいた。

知性を讃えた漆黒の瞳が閉じられていると、存外に幼い表情が浮きだつ。
猊下の、あの老成した雰囲気は瞳と言葉からだ。
今みたいに瞳も唇も閉じていれば、歳相応………と言っても人間年齢として、だが………で、
薄く桃色した唇はぷっくりとして、そこから寝息が零れ落ちている。

「猊下、朝ですよ?」

囁くように呟いて、一つ、その唇にキスを落とす。
それに全く気付かず、眠りについていて、小さな笑いがこみ上げてきた。

「猊下?」
「んっ……」

軽く肩を揺さぶると、猊下は目元をこすり、、、だが、そのまま再び、眠りにつく。
俺は肩をすくめ、首を振った。
これは起きそうにない。
時間を改めるように閣下に云ったほうがさそうだ。

「…………ヨザック?」

諦めて歩き出した俺の背後から声がかかる。
結局、起こしてしまったのか。
振り返って、名を呼ぼうとして………ぎょっとした。
猊下がすごい表情をして、俺を睨みつけている。

「げげ猊下……?」
「……………」

不機嫌に潜められた眉で見上げられれば、俺は固まるしかない。
寝起きは悪いような気がしていたが、これ以上とは思わなかった。
どうしてこれを宥めようかと悩んでいると、ふいに猊下が布団をばさり、と捲り上げた。

「ほら、早く!」
「………え?」
「早く、早く」
「えっえっ???」

捲り上げていない方の手で布団をぱたぱた叩いている。
………来いって事、なんだろうな………

陛下と並び証される美貌が不機嫌そうにしていても、その美貌に揺るぎはない。
だが、迫力は三倍増しだ。
どんなお叱りを受けるのだろうかと、恐る恐る近づいていくと、それでも足りないというように、布団をぱしぱし叩いている。
………入って来いという事なのだろうか?
ベッドの端で逡巡していると、更に猊下の眉はつりあがってきて、俺はいろいろとベッドに潜ることにした。

「…………よし」
「え?」

ぱたり。

「…………」

くー。

「…………」

ナンナンデスカ、コレハ。

俺が布団に入ったことを確認すると、満足そうに微笑んで、そのまま眠りについてしまった。
思わず、呆然と眠りについた猊下の表情を見つめてしまったのは仕方ないことだと思う。
そうして、猊下の前髪がさらり、と頬にかかった姿を見て、漸く、我を取り戻した。
ほほをぽりぽりと掻き、猊下が起きないように小さなため息をつく。

もしかしなくても、これはいわゆる所の寝ぼけた姿……なのだろうか。
こみ上げる笑いを奥歯でかみ殺して、俺は腕の中に猊下を抱き込んだ。
ん、、、、と声を漏らすが、猊下は起きる気配がない。

心地よい体温が、自分にも睡魔を呼び起こす。
この少年に会いたいが為にこんな朝早くここまで戻ってきたのだ。

 

「おやすみ、よい夢を………」

 

 

Fin


いえ、何が書きたかったのか、自分でも謎ですから(脱兎

猊下は寝起き悪いだーなー、で書いたはずなのに、何故かこんな話になってしまいました
そんな猊下にめろめろです。主に私が(ぁ

061109 あずま

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