おはよう。

 

「おはようございます、陛下」

軽くノックした後、扉を開くと、そこはまだ闇に支配されている。
まだまだ寝息が響く部屋。
二つあるのは、弟がまた来ているからだろう。

気付かれないように小さな笑みを落とし、まず、カーテンを開きにいく。
サァァッと差し込んでくる日差しは、今日もロードワークに適した天気で、
窓を開けると、少しだけ冷たい………が、心地よい風が頬を撫でる。

振り返ってみれば、やはり、二人はまだ起きそうにない。
幼い頃、懐いていた弟は、敬愛する少年王のベッドを占領し、相も変わらない寝息でその美貌を台無しにしている。
目的の少年は、今にもベッドの端から落ちそうな程の所で丸くなって眠っていた。

「ユーリ………」

頬にかかる髪を払いのけると、あどけない寝顔が現れる。
まだ、成長しきってない頬のラインはふっくらとして、愛らしさを醸し出して。
ついつい、頬を突っついてしまうと、さすがにユーリが寝返りを打つ。

「んっ………」
「おはようございます、ユーリ」

そう言って。

うっすら瞳を開けたユーリに、身を屈めて、唇に一つ、口付けを。
抵抗もしなければ受け入れもせず、ただ、まだ視点の定まらない瞳で、俺を見つめている。
その瞳が徐々に色を取り入れていき、しっかり俺を見つめた。

「おはようございます、陛下」
「……おはよう」

でも、陛下と呼ぶなよ、と続け、ユーリは身を起こし、大きな伸びをした。
隣で寝ているヴォルフラムを起こさないようにそろそろ寝台を抜け出し、ふと向けた、窓の先を見る。

「今日はいい天気だな、ロードワークに最適だよな」
「そうですね」

再び、大きな伸びをするユーリにロードワーク用の服を渡す。
ユーリはそれを受け取ると、俺に向かって微笑みかける。

「いっつもお越しにきてくれてありがとうな」
「いえ、たいしたことじゃないですよ」
「そうか〜? 俺、早起きが苦手だからなぁ」

後頭部を掻きながら笑うユーリに微笑を返し、寝癖を直すと、着替えを促す。

 

本当にたいしたことじゃない。
むしろ、毎日、役得気分だ。

だって
貴方は寝起きの五秒間、何しても覚えてないのだから。

毎日、おはようの後に、おはようのキスを。
貴方は覚えていないけどね。

 

 

「だから、アレがファーストキスじゃないんですよ、ユーリ」

 

 

Fin


ほら、だって次男だし(何が?

だって、目の前で愛しの陛下が寝ているんですよ!
手を出していないはずがないじゃナイデスカ!(力説
彼は弟がいても気にしませんよ、えぇ(ぁ

061109 あずま

 

 

 

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