その日、僕は眞魔国の書庫に来ていた。
理由は簡単。
地球にいる間のココの世界情勢や歴史を得る為。
ベースを知らなければ、ゲームは愉しく出来ない。

何よりも。
我が魔王、渋谷有利の為に。

 

まだ、自分は16歳の少年でしかないのだから。

 

 

きす。

 

真新しい紙とインクの匂いに包まれたこの書庫は、血盟城の中でも気に入っている場所だ。
気になった背表紙をとり、ちらりと覗いた内容が中々の出来で、思わず、本棚にもたれながら、続きを読んでいると、
書庫の扉が開いた音がした。
それに続く足跡。

「猊下、お持ちしましたわよんv」
「ありがとう」

新しい任務が入るまでの間、僕の護衛を任されたヨザックが軽やかな足取りで近づいてくる。
ちょうど、話が途切れるまで視線を離さずいると、ヨザックは僕の真隣にやってきた。
彼も本に夢中になっている僕に気付き、そのまま僕の視線が上がるのを待ってくれている。

ふ、と、あげた視線が、と視線が絡まる。
身長差は頭一つ分ぐらい。
思いもよらない至近距離に、お互いが、小さく息を呑んだ。

……………あ、される、、、、と思った瞬間。

唇が降りてきた。僕の唇に。
掠めるように触れて、吸われながら啄まれる。
触れるだけのキスが繰り返し行われ、最後に下唇を舐められた。

 

「ねぇ、猊下。猊下は何故、俺のキスを嫌がらないんですか?」
「そりゃキスが好きだからだよ」
「キス、が、ですか……?」
「そう。キス、、、がね」

再び、本の続きを読み始めた僕に、ヨザックが複雑な視線を送る。
なんだか、その表情が愉しい。
視線に気付いていないふりをして、ページを次に捲ったら……………その腕を取られた。

「っ……………」

力強く引かれ、よろめいた先には当然の如く、あつい胸板があり、
攫われた顎の行く先には、ヨザックの唇があった。

唇を舐められ、そのまま舌が乱入してくる。
彼の秘めた野性的なキス。荒々しく、食い尽くすように貪るキスは、呼吸まで奪われそうで。

だけど、それも計算どおりだったから。

肩を掴んで、顔を上げる。
追いかけてくる舌を今度は自分から進んで絡めた。
一瞬、驚いたヨザックにうっすら微笑みかけて。
後頭部をゆっくり抱え込み、キスの続きを促すと、更に深い口付けが返ってきた。
飲み込めない唾液を零しながら、再び、口付けに没頭する。
噛み付くようなキスを煽るように吐息を零して。
本棚とヨザックの腕に支えられながら、僕は掴んだ服を更に強く握り締めた。

 

「……………どこでそのテクニックを養ってきたんです?」
「んー………四千年の歴史から?」

抱きしめられたまま、息を整える。
零れた唾液を両手の甲で拭うと、ヨザックが深いため息をついた。

「ヨザック?」
「あーもー、今の猊下は目の毒です。犯罪です。俺が可愛そうです」
「………は?」
「色っぽすぎて、このまま押し倒したくなる……」

オスの顔して囁いてきた獣に、僕はふ、と微笑んで見せた。
当然だ。
僕がそう見えるように行動しているのだから。

「このまま、僕を犯しちゃうのかい?」
「…………」

獣の瞳に欲望に濡れた輝きがともる。
それは狙いを定めた肉食獣のそれで、恐怖に捕らわれるぐらい、一直線にエモノだけを見つめている。
どのぐらい二人、見つめあっていたか。
その沈黙は、ヨザックがふ、と笑ったことで断ち切れた。

「いえ。今回はやめておきましょう」
「何故?」
「……確かに猊下は四千年のテクニックは持っているでしょう。危うく、俺が飲み込まれそうになりましたからね。
だけど………この体は違う。この体は16年しか経験が、ない」
「………」
「体は魂を守る第一の楯ですからね。………傷つけるわけにはいきません」

そうして、こめかみにキスが落とされる。

ちゃんと気付いていたんだな。
キスの間に、僕の体が震えていたことに。

ヨザックの言うように、僕は四千年の記憶を使うことが出来るが、この身は16年しか生きておらず、
16年の経験しかない。
触れる事に長けていても、ふれられる事に関しては………無垢なのだ。

うん、彼は、いい。
ちゃんと理解している。
僕という、個を。
そのぐらい理解してもらわないと、隣に立たせる事は出来ないからね。

僕は覗き込んでくるヨザックの頬にキスを返し、後頭部に両腕を回した。

「猊下?」
「ご褒美のキス、いらないかい?」

くすり、と笑うと、ヨザックはぽりぽり頭をかいて

「キスも欲しいですが、猊下が欲しいんですがね」
「それとこれとは別。それとも、僕のキスはいらない?」
「いいえ」

口も早く否定すると、すぐさま唇が振ってきた。
深い口付けに入る前に、一度、唇が離され、眼鏡を取り上げられる。

「猊下………愛してますよ」

言葉と共に降りてきた唇。
僕は瞳を閉じて、侵入してきた舌に意識を集中させた。

 

 

Fin

 


 

書きやすっ!
コンユーの方は書きにくくてうんうん悩みましたが、こちらはすらすらっと書いちゃいました。
猊下を色っぽくかけたでしょうか?v(笑
でも、まだ両想いじゃない二人に悦(ぇ

061108 あずま

 

 

 

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